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2011年度薬学部入試のポイント Vol.4

 今回は化学Ⅰの理論の中でも重要な位置を占める熱化学と酸・塩基と中和反応について説明したいと思います。

 みなさんは一般の化学反応式と熱化学方程式の違いを正しく理解していますか?ここでは、水素が燃焼して水が生成する場合を例にとってそれらの相違点を考えてみましょう。

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 ①が化学反応式、②が熱化学方程式ですね。①と②の違いは係数、左辺と右辺をつなぐ記号、物質の状態の表記の有無、熱量の表記の有無です。いくつかの相違点がありますが、熱化学の視点に立てば、化学反応式はその係数が反応する物質(反応物、生成物)の物質量(数)の比を表しているのに対して、熱化学方程式はその係数が物質量そのものを表している点が大きな違いと言えます。すなわち、②の式は気体のH2分子1molと気体のO2分子0.5molが反応して、液体のH2O分子が1mol生成し、そのとき286kJの熱が放出されることを表しています。また、みなさんはあまり意識されていないかも知れませんが、熱化学方程式中の化学式(H2、O2等)は単に物質の種類を表しているだけでなく、その物質1molがもつエネルギー量も表しています。等式の両辺は同じ物理量でなければなりませんから、右辺の1つの項にkJ単位のエネルギーがあると言うことは、両辺の化学式もエネルギーの単位をもっていることになります。ちなみに、H2分子がもつエネルギーは主に結合エネルギーですが、その他にも、運動エネルギーや分子間力による位置エネルギー等が考えられます。

ヘスの法則とその利用
 “反応熱は反応の経路によらず、反応のはじめの状態と終わりの状態だけで決まる”と言うのがヘスの法則です。この法則を利用すると、実験では求めることが難しい反応熱も計算により求めることができます。例えば、一酸化炭素の生成熱を実験より求めようとすれば、黒鉛を不完全燃焼させてすべてをCOの段階で止めなければなりませんが、実際には完全燃焼したCO2が同時に生成してしまいますから、COの生成熱を測定することは困難です。そこで、ヘスの法則を利用します。下の図を見て下さい。この図ではじめの状態はC(黒鉛)+O2、終わりの状態はCO2です。図は、はじめの状態から直接終わりの状態へ反応が進めば394kJの熱が放出されること、また、いったんCOが発生し、それが燃焼してCO2が生成する2つの経路が示されています。ヘスの法則によれば、394kJと(Q+283)kJが等しいことになります。よって、COの生成熱Qは111(=394-283)kJとなります。

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 次に中和反応の量的関係について説明したいと思います。酸と塩基が過不足なく完全に中和するとき

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 上の関係式が成り立ちます。例えば、1〔mol/L〕のNaOH(強塩基、α=1とする)水溶液1〔L〕中には、OH-は1mol存在しますが、これを中和するとき1〔mol/L〕のHCl(強酸、α=1とする)は1〔L〕必要となります。それでは、1mol/LのCH3COOH(弱酸、α=0.01)水溶液では何〔L〕必要でしょうか?答はこの場合も1〔L〕です。1〔L〕のCH3COOH水溶液中にはH+は0.01molしか存在しませんが、その0.01molのH+が0.01molのOH-と反応してH2Oが生成し、いったんH+が0となると考えます。しかし、CH3COOH水溶液中の未反応のCH3COOH分子(0.99mol)がすぐにその100分の1だけ電離し、再びOH-と反応しH2Oを生成し、またH+は0となりますが、すぐに未反応のCH3COOH分子がその100分の1だけ電離して・・・このような反応が便宜上繰り返されていると考えると、結局、電離度α=0.01のCH3COOH水溶液であっても1〔L〕中のCH3COOH分子が1molのH+を放出することになります。したがって、中和反応の量的関係においては電離度は関係なく、酸・塩基の水溶液どうしの反応では次の公式が成り立ちます。

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 ただし、強塩基を強酸で中和した場合と弱酸で中和した場合とでは中和点での液性が異なります。すなわち、前者の場合、水溶液は中性となりますが、後者の場合は生成した塩の加水分解により弱塩基となります。

 最後に少し難しくなりますが、NaOHとNa2CO3の混合物をHClで滴定する場合を考えてみましょう。
 この滴定においては、下の3つの反応(①、②、③)が起こります。

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 問題集や参考書によっては、第一中和点において①、②の反応が同時に完結するかのような曖昧な表現になっているものをしばしば見うけますが、実際には①の反応、すなわち、NaOHのOH-とH+の中和は3つの中和反応のなかで最も速く反応が進みます。したがって、①の反応が終了した時点で大半のNa2CO3は中和されず、未反応のNa2CO3の加水分解により、水溶液はかなり強い塩基性になっています。そのため、①の中和反応による急激なpHの変化、いわゆる、pHジャンプは認められず滴定曲線はなだらかな右下がりの曲線になっているのです。
 結局、第一中和点は②の反応の終点を表していることになります。この中和点では生成したNaHCO3の加水分解により、水溶液はわずかに塩基性になっています。第一中和点以降に滴下されたHClは③の中和反応に使われ、③の反応の終点が第二中和点になります。第一中和点から第二中和点のあいだに滴下したHClの物質量は③の反応式よりNaHCO3の物質量、すなわちNa2CO3と等しくなります。
 上の例は定性的な解説になっていますが、内容をよく理解して頂ければNaClやNa2CO3の物質量を求める計算問題も簡単に解けると思いますので、ぜひ、チャレンジして下さい。

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